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賃貸と購入の費用比較

「賃貸はドブに金を捨ててるだけ」「持ち家は資産になるから絶対得」——この手の意見、ネットのそこら中に転がってるけど、ぶっちゃけどっちも半分ウソだ。理由はシンプルで、賃貸と購入のどちらが得かは、住む年数・金利・売却価格・運用利回りという4つの変数で答えが180度変わるから。変数を無視して「俺はこうだった」だけを語っても、再現性はゼロに近い。

この記事では、感覚論を一回全部捨てて、実際に効いてくるコストとリスクだけを並べる。最後には自分で損益分岐点を出せる形にするので、他人の結論を借りるのはやめよう。

結論を先に言うと

  • 短期(〜7年くらい)で住み替える前提なら、ほぼ確実に賃貸が有利
  • 長期(15年以上)同じ場所に住む前提なら、購入が有利になるケースが多い
  • その間(8〜15年)は金利と売却価格で完全にひっくり返るグレーゾーン

理由は単純で、購入には「最初と最後にまとめて吹き飛ぶコスト」があるから。短期だとこれが回収できない。年数で割るほど1年あたりの負担が薄まる、というだけの話。

購入の初期費用と売却費用、ここが一番デカい

買う瞬間に消える金

物件価格の7〜10%程度が、ローンとは別に現金で消える。内訳は仲介手数料、登記関連、保証やローン事務の手数料、火災保険、引っ越しなど。頭金ゼロで買った気になっていても、この分は現金で必要になる。

そしてこの金は1円も資産にならない。しかも売る時にも同じくらい消える。

売る瞬間に消える金

売却時には仲介手数料、抵当権抹消の費用、場合によっては売却益への課税。一番効くのは買った値段より安くしか売れなかった場合。建物は確実に劣化するし、市場が冷えれば価格は下がる。ローン残債より高く売れなければ、差額を現金で一括で払うことになる。

つまり「買ってすぐ売る」は、往復で物件価格の15〜20%を捨てる行為。短期で住み替える人はここで確実に負ける。

賃貸側の隠れコスト

  • 更新料:2年ごとに1ヶ月分など、地味に効く
  • 初期費用:敷金・礼金・仲介・保証・鍵交換で家賃の4〜5ヶ月分
  • 退去時の原状回復:敷金から引かれ、足が出ることも普通にある
  • 家賃の改定:更新のタイミングで上げられる可能性がある
  • 追い出しリスク:オーナーの都合で更新を拒否されるケースはゼロじゃない

一番デカいのは「死ぬまで払い続ける」こと。ローンには完済があるけど、家賃には完済がない。収入が落ちた後の固定費として、そのまま残り続ける。

それと、高齢になると審査が通らない問題。保証する側も貸す側も、収入が年金だけの高齢者を嫌がる。これは金銭コストというより選択肢が減るコストで、若いうちは実感ゼロ、60代で急に効いてくる。

購入側の隠れコスト

  • 固定資産税・都市計画税:毎年、ずっと
  • 管理費・修繕積立金:集合住宅なら毎月。修繕積立金は長期で上がるのが普通
  • 大規模修繕:10〜15年ごとにまとまった出費。積立が足りなければ一時金
  • 設備の寿命:給湯器、外壁、屋根、エレベーター。全部いつか来る
  • 金利上昇:変動で借りていれば返済額が増える

ここで見落とされがちなのが、修繕積立金は「今の金額」が「未来の金額」じゃないということ。新築時の安い設定が数年後に段階的に上がる設計の物件は珍しくない。買う時のシミュレーションに10年後の管理費・積立金が入っていない人が多すぎる。

一番見落とされるコスト「機会費用」

頭金と諸費用で消える現金、数百万円としよう。これをローン返済に突っ込む代わりに、丸ごと運用に回したらどうなるか。長期の積立運用を年3〜5%と仮置きすると、20年で元本の2倍前後になる。持ち家はレバレッジを効かせた集中投資であり、その機会費用とリスクを同時に引き受けている。

逆に持ち家側には「家賃がかからない」という確実なリターンがある。いわゆる帰属家賃で、自炊と同じ「支出していないことによる利益」だ。運用利回りと帰属家賃、どっちが大きいかで結論が変わる。

さらに購入は分散できない。1つの物件、1つのエリア、1つの建物に資産の大部分を賭ける。人口減、災害、地価下落、建物の劣化——全部モロに食らう。賃貸は逆に、そのリスクをオーナーに押し付けている。ただし家賃にはそのリスク分の上乗せが乗っている、という見方も忘れずに。

損益分岐点の出し方(テンプレ)

ざっくりでいいので、この形で並べる。

  • 購入総コスト = 頭金 + 初期諸費用 + ローン返済総額 + 税金 + 管理費・修繕積立 + リフォーム費用 − 売却価格 + 売却諸費用
  • 賃貸総コスト = 家賃総額 + 更新料 + 初期費用 + 退去費用 + 保険料

で、それぞれを住んだ年数で割って「1年あたり」で比べる。ポイントは売却価格を何年後にいくらで置くか。ここを楽観的に置いた瞬間、シミュレーションはただの願望になる。購入価格の0.7〜0.8倍で置いておくくらいが安全だ。

金利とインフレという、ズルい変数

固定金利は安心と引き換えに割高、変動金利は安いが上がるリスクを抱える。覚えておきたいのは、インフレはローンを実質的に軽くするということ。借金の名目額は固定なので、物価と給与が上がれば返済負担は相対的に減る。家賃は逆で、インフレとともに上がる。

つまり長期固定で低金利の時に借りた人と、短期変動で借りた人では、20年後の景色が全く違う。ここは運の要素も普通にある。

ケース別ざっくり判定

  • 3〜5年で住み替え予定 → 賃貸一択。購入はほぼ確実に負ける
  • 10年住むか微妙 → グレー。金利と売却価格次第でどっちもあり
  • 20年以上同じ場所に住む → 購入が有利になりやすい
  • 収入が不安定・自営 → 審査の厳しさと繰上返済の自由度を考えると、無理に買う必要はない
  • 老後の家賃が怖い → 購入は「老後の固定費を消す保険」として見る価値がある

「第3の選択肢」を忘れてない?

二択で悩むから辛い。実際はもっとある。

  • 賃貸に住みつつ、購入した場合との差額を淡々と積み立てる
  • 住み替え前提で、条件のいい中古だけを狙う
  • 購入して一部を貸し、返済に充てる
  • 親の家に住む・将来相続する前提で、その分を別に運用する
  • 借り上げ制度や社宅を使えるうちは徹底的に使う

要は「買うか借りるか」じゃなくて、どのリスクを自分で持ち、どのリスクを他人に渡すかの話だ。

で、結局どっちが得なのか

金銭だけで言えば、短期は賃貸、長期は購入、グレーゾーンは金利次第。ただし「得」の定義に、住み替えの自由、リフォームの自由、ペットや楽器、近所付き合いからの距離感みたいな金額に換算しにくい価値を入れると、答えは人によって変わる。

大事なのは、誰かの「俺はこうだった」を鵜呑みにしないこと。前提が1個違うだけで結論は反転する。自分の年数・金利・売却想定・機会費用を1つずつ置いて、表計算でもメモでもいいから一度並べてみる。それだけで、ネットの意見に振り回される時間がかなり減る。そして、迷ったら「10年未満で売る可能性があるなら買わない」——これだけ守っておけば、大きな損はまずしない。